いい加減オールドファッションの食べ方を決めよう

僕は今、"あるもの"と対峙している。


きつね色に揚がった生地にチョコがかかった、誰もが知るオールドファッションだ。バイト終わりに食べるミスド程体に染みるものはない。


だが今、僕はこいつにキレている。




何故チョコの面積がここまで少ない?

食べる人が持ちやすくするため?ならポッキーくらいのチョコの比率でもいいはず。ミスド側による意図的なマーケティング戦略なのだろうか。


それだけではない。恐らく多くの人が長年頭を悩ませて来たと思うが食べ方に困るのである。カレーでさえ米とルーの比率が1:1である。途中で失敗してどちらかが余っても家であれば足して満足いく食事をすることができる。


でもこのバカはそうはいかない。ミスドに「このパサパサ生地が余ってしまったのですがチョコソースかけてくれますか?」と言ったらかけてくれるのか?消費者をなめるな。


試しに「オールドファッション 食べ方」で検索してみても、結果は「オーブン加熱で美味しく仕上がる!」だとか「冷凍しとくとサクサク感が増す!」といったものしかない。周りの人間はもうダメだ。ミスドの掌の上で転がされ、この状況をさも当たり前のように捉え、さらにそれに楽しさを見出している。おしまい。


再びオールドファッションと相対する。だんだん口を大きく開いてこちらを嘲笑する顔のように見えてきた。これは幻覚か、はたまたミスド側の勝ち誇った笑みそのものなのか。


たまらず生地を一口齧る。サクッとした口当たりは良いが咀嚼を繰り返すうちに口の中が乾燥してきた。カロリーメイトと同じだろこれ、そう毒づいてたまらずチョコ生地を頬張った。

これがカレーだったらどうする?まだ米が全体の7割強を占めているのに救いのルーは数口分しかない。孤立無援。背水の陣。恐らく漢に囲まれた項羽も似たような気持ちだったのだろう。もはや美味しさはとうに消え、"絶望"を味わいながら食べ進めた。


そうこうしている内にチョコが残り一口に。涙を流しながらチョコを完食すると残りは生地のみに。何なんだこの物体は。何故砂漠に落ちてるような石を食べなければいけないのか。ミスドを、そしてこの世の全ドーナツを呪いながら残りの石を口に運んだ。



原型をとどめてたまるか、そう思い粉々に擦り潰れるまで咀嚼を繰り返した。口内がパサパサする、苦しい。お茶を飲まねば…。そうお茶に手を伸ばした瞬間鼻から何かが抜けた。


最初はそれが何か分からなかった。しかしそれが芳醇な小麦とバターの香りと気づくのに多くの時間は要さなかった。仄かな甘味、まろやかな風味のバター、生産者の顔、ドーナツを裏で一生懸命作るお姉さんたちの姿…。これらが走馬灯の如く脳内をめぐり気づけば僕は膝から崩れ落ちていた。そして膝には大粒の涙がこぼれていた。



一般的に我々はチョコレートやその他ソースといった主役に目がいく。しかしそんなもの虚構でしかない。そうしてステージの上で輝くソースの裏には必死で支える生地の姿がある。確かに地味だしなんの取り柄もない醜怪なものかもしれない。でもそいつらは、陽の目を浴びることを捨て、優しい心でソースを照らしているし、噛めば噛むほど奥ゆかしい優しい味を持っているのだ。ミスドが真に届けたかったのはオールドファッションなんて稚拙なものではない。縁の下の力持ちが持つボールドパッション(寛容な精神)だったのである。自分はなんと矮小な人間だったことかと激しく呪い、残りのドーナツを嚥下した。



アラームが鳴った。コンポのinitial writing planの提出まで後1日を切った。僕は胃袋ではない、もっと大きく、でも見えない"何か"が満たされる感覚を持ったままパソコンへと向かった。





以上、オールドファッションとボールドパッションって韻踏めそうだなーって所から着想を得た駄文でした。この文章が良ければグッドボタン👍とチャンネル登録😎お願いします!ではおやすみなさい。