フランスで乞食に囲まれたけどなんか逃げられちゃった話

どうもー、みなさん元気でしょうか。生活が落ち着くまでSNS控えようと思ってたら1ヶ月経ってて戦慄。自分はなんとかクラスの日本人やその他留学生と仲良くなれてそこそこな日々を送れてます。よかったよかった。

 

僕は現在学生寮に住んでおり、必要最低限の設備と家賃38000円というヨーロッパにしては破格の金額のもと生きながらえています。

 

僕が住んでいる寮は大学から結構遠く、電車を使っても40分ほど時間がかかってしまう。今回は1週間前に駅で起きた事件。

 

僕は現在1コマ2時間の授業を10コマ取っている。中でも、水曜日は3コマある上に終わるのが18時半なので疲労はかなり蓄積されている。そんな中事件は起きた。

 

いつものように授業が終わり、疲労困憊の中駅の入り口で切符を買おうとしていると

 

「excusez moi? (英語で言うexcuse me)」

 

と横からしつこく話しかけてくる。そう、いわゆる”乞食”だ。大学の最寄り駅にはたくさんの乞食が生息しており、善意ある学生をターゲットにお金をせびってくる。マイクラのゾンビのように学生の帰宅のタイミングで奴らはスポーンするのだ。

 

ほぼ毎日奴らから話しかけられるので自分はもはや慣れていた。いや、慣れていると思っていた。しかし、アジア人は恐らくカモなのか毎回執拗に話しかけてくる。わざと聞こえるように大きなため息をつき切符購入のパネルを操作していると、あるものが視界に見切れた。

 

それは子供だった。

 

恐らくその乞食の子供なのだろう。しかし自分にとっては衝撃で、しかも疲れていたこともありその子供を暫く凝視してしまった。それが大きなミスであった。

 

自分が子供に興味を示すことを確認すると乞食は大きく詰め寄ってきた。全然聞き取れず何を言っているかわからないが恐らく情に訴えかけているのだろう。そして、その子供もこちらをしきりに眺めてきている。正直僕は狼狽していた。額から冷たい汗が流れるのを感じた。

 

そして、気配を感じ周囲に目をやってさらに驚いた。乞食が僕を取り囲んでいるのだ。恐らく彼らはグルではないと思うが、自分が乞食に興味を示していることに気づき集ってきたのだ。正直かなり怖かった。そんな自分を横目に他の学生は各々帰路についている。きっと厄介事には関わりたくないのだろう。

 

こんな出来事は初めてで頭が真っ白になっていたが、後ろにいた乞食の声で意識が戻った。そいつは僕の財布を指差して何かを言っている。その時まで自分の財布が開いていること、そして手が小刻みに震えていることにも気づいていなかった。僕はそいつの言葉に耳を傾けた。その乞食は

「c'est quoi? (それは何?)」

 

と言っている。自分はその指差した方を見た。

 

 

…なにこれ?

 

 

自分でも何かわからずそれをつまみあげた。そしてわかった。

 

 

AIU祭の引換券だった。

2年前の学祭の景品の引換券、交換し損ね自分は20枚近く所有していた。

そいつはこれに強い関心を抱いていた。ヨーロッパはキャッシュレスが浸透しており、自分の財布の中身はクレジットカードとこういう僅かなクーポン券等しか入っていない簡素なものだったのだ。

 

自分が嘘をつくまでに多くの時間は要さなかった。拙いフランス語で「これは日本の紙幣で、ここでは使えないからこれをあげる」といったニュアンスの言葉を投げかけ財布の中で眠っていたハリボテの紙幣をばら撒いた。

 

20枚近く持っていたチケットを配るのに自分は快感さえ覚えていた。自分はただの紙切れをばら撒いているだけなのに周囲の人間は自分を神のように崇め感謝している。そう、その紙切れは頑張って貯めても稲庭うどんセットとかしか交換できないのに________。

 

記念だし数枚だけチケットは残し、そして財布にあったゴミもついでにあげて僕はその場を逃げるようにして立ち去った。彼らはとても感謝していた。ぜひAIUにも来て欲しいものである。

 

 

そして、なんとか家に着いた。1日が恐ろしいほどに長く感じられ、そして解放感からか疲れがどっと押し寄せてきた。スッキリとした財布の中身を一瞥し、安堵しながら倒れるように眠りについた。

 

 

 

 

あれから数日が経過し、駅には相変わらず乞食が鎮座している。僕はどんな顔をしようか考えていた。あの日以降、僕は見つかって問い詰められるのが怖いので少し変顔しながら前を通り過ぎているのだ。一昨日はサングラスをかけ、昨日は目を二重にして通った。幸いばれてはいないようだった。

 

 

 

今日は半沢直樹みたいな顔にしよう。

 

 

構内のトイレに駆け込み、人がいないことを確認して鏡で顔を作ってみる。よし、これなら今日も大丈夫そうだ。

 

僕は悠然と奴らの前を通過した。「倍返しだ」と心の中で呟きながら________________。

 

 

 

そんなこんなで僕はギリギリのラインを攻めて生活を送ってます。こんな冗長な文章読んでくれている人いるのか疑問だけどあと11ヶ月頑張るぞ!

スタバで起きたカイダン話

これは、以前僕が体験したちょっと不思議な出来事である。

 

つい先日、イオンモールのスタバで一人パソコンでバイトをしていた時のこと。

デスクで作業していると隣のテーブルに女子大生(?)二人組が腰をかけた。その日は休日であったため、イオンモール内は賑わっており、スタバにもかなりの客がいた。単調作業であったため、半ばボーッとしながらパソコン操作をしていると、

 

「私、ついに彼氏に別れを切り出そうと思うんだよね。」

 

という言葉を女性Aが発した。会話の内容を少し盗み聞きしてみた感じ、Aさんが女性Bに恋愛相談をしているようだった。「よくありがちな話だな」と思いながらその人たちの話を少し聞いてみると、彼氏は

・現在22歳(おそらくAIU生ではない)

・Aさんとは大学のサークルで知り合った(Bさんは知らない)

・付き合って半年になろうとしているところ

・性格はちょい優しいくらい

といった感じで、今まではかなり順風満帆に付き合っていたらしい。そんなこんなで恋愛話を二人でしていると、Bさんが

「どうして別れようと思ったの?」ときいた。どうせ何かしらトラブルがあったんだろうなとか思いながら聞いていると、

 

「カイダンの話がしんどくて…」とAさん。

 

 

…ほう。どうやら彼氏はホラーが好きで、彼女は彼氏のホラーの話やそういった趣味が怖くて嫌いになってしまったと、そう僕は解釈していた。

「え、そんなに彼氏ホラー好きなの?笑」と茶化すBさん。しかし、その次に発したAさんの言葉に、Bさん、そして僕は思わず耳を疑った。

 

 

 

「あ、その怪談じゃなくて階段の方ね、ほら、上り下りする方の…」

 

 

 

 

…ん?

 

 

 

 

…え、そっちの階段?…は?

 

 

「え、どういうことwww」とBさんも大爆笑している。Aさんは必死に彼氏との階段エピソードをいくつか話した。

・階段を使うたびにどういう種類・材質かを分析する

エスカレーター・エレベーター大アンチで、使おうとすると怒られる

・階段を上り下りするたびに何段だったか問題を出してくる。正解すると喜ぶし、外すと若干イラつく。

極めつけは春休み、Aさんと彼氏が東京に旅行して東京タワーに登ろうとした時に、Aさんはエレベーターで登ろうとしていたが、彼氏は頑なに譲らず、結局階段を使って登ろうとしていたらしい。その際に、軽く喧嘩になってしまい。体力的にも辛くその出来事から彼氏に対して冷め始めたとのことだった。

 

そこら辺から僕は二人の話に夢中になっていた。パソコンが長時間操作していないせいで画面が暗くなっている。僕は慌ててマウスを左右に走らせ、作業をしているふりを装った。

 

一度口火を切ったAさんの階段愚痴は止まることを知らない。1段飛ばしで登っていく中学生にキレたり、旅行先を選ぶときは全て有名な階段がある場所から探して提案したり(東京タワーも階段を登りたいから提案されたらしい)。いったい階段になんの魅力があるのか、僕は半ば呆れながらAさんに同情しつつ耳を傾けていた。

 

 

Bさんも、時には笑い、時には引いたりしながらAさんの愚痴を聞いていた。すると、Aさんから

「どのように別れを切り出せばいいだろう」

という質問がBさんに投げかけられた。どうやら彼氏は少しメンヘラ気質があるらしく、Aさんは別れるならキッパリと別れを告げたいそうなのだ。二人でしばらく熟慮していると、Bさんがふいに

 

「階段の悪口をものすごく言ってみたら?」

 

と言った。

Bさん「彼氏がそこまで階段のことが好きなら、その階段を散々バカにしたら彼氏もAさんのこと嫌いになってスパッと別れられるんじゃない?」

Aさん「え、でもそれで気まずくなるのもなんかなぁ…」

Bさん「いやそんなこと言ってたら彼氏はずっとひきずってくるよ、そうならないうちにキッパリと言っちゃうのがいいって」

Aさん「そういうもんかぁ…」

 

と、長いやり取りの末、Aさんは階段を限りなくディスって別れる作戦にすることに腹を決めたらしい。ちなみに、僕はこの時にはもうパソコンは閉じ、フラペチーノ片手に本格的に二人の話を聞く体制をとっていた。

 

階段の悪口を考える二人。無機物であることをいいことに言いたい放題。彼氏が聞いたら失神してしまうのではないかというくらいありったけの罵詈雑言を考えだし、別れる決意を固めたAさん。そんなこんなで話がまとまり、店を後にした二人。

 

 

 

…何かが胸をつっかえていた。

 

二人がいなくなった後、僕はストローが入っていた袋を折ったりして遊びながら二人の会話を反芻した。何かが気になる。このモヤモヤはいったいなんなのか。そうやって暫く耽っていると、その何かにようやく気づけた。

 

 

 

 

 

いくらなんでも階段をバカにしすぎじゃないだろうか。

 

 

 

確かに、Aさんに対する彼氏の態度は目に余るものがある。別れるのも納得。でも、でもだ。階段それ自体は何も悪くないじゃないか。

 

AさんとBさんは一心不乱に階段への悪口をあげていた。踏みつけられるだけの無能、昭和に生まれた時代遅れの老害、人から快適さを奪う悪魔…そんなに言わなくたっていいじゃないか。多分昭和の前にも階段あっただろうし。

 

僕は閉じていたパソコンを急いで開き、階段の魅力を検索した。ほら、こんなにもユニークでおしゃれな階段があるじゃないか。階段は古来から進化という名の”階層”を上り詰め、今や芸術の一部として昇華した先人の知恵の結晶なんだぞ。何が老害だよマジで。

世界にある美しすぎる階段12選【第二弾:ユニーク、奇妙な階段編 ...

階段 螺旋階段のおしゃれなインテリアコーディネート・レイアウトの実例 | RoomClip(ルームクリップ)

 

 

…そこまで考えたところでハッとした。自分は何を考えているのか、これではAさんを苦しめていた彼氏と同じじゃないだろうか。

 

 

 

……まさか。

 

 

 

 

まさか。彼氏は僕と同じように階段を調べ、その魅力に陶酔してしまったせいで、階段という魅力の”螺旋階段”を永遠と彷徨っているのではないか…

 

 

 

 

 

俺が、救わないと。

 

 

 

 

氷と混ざって薄くなったフラペチーノ。一気に胃の中に流し込み、階段という名のスパイラルに迷い込んだAさんの彼氏を救うべく、そして、夕飯の買い出しのために、僕はエスカレーターでスーパーへと向かった。

惰生を貪る

おひさ、元気にしてるでしょうか。今年もあと2週間ちょい、周りは期末に追われて剣呑な雰囲気になってるなか、僕はのらりくらりと暮らしている。英語の試験も受かり、順当にいけば留学も行けそう。

 

ちょうど先日、ダンス部の公演があり数多くの友達が所属していることから観に行った。その時抱いた感情をたまには吐露したくて書きたいと思う。ただスッキリしたいだけなので深く考えないで欲しいしなんなら見ないで欲しい(じゃあ書くな)

 

 

AIUのダンス部は3.40人?くらい?が所属している大きな部活で、各ジャンルの他に個人チームがあり各々好きなところに所属してパフォーマンスをしている。僕は前々から数多なる人から勧誘を受けているが、あまりにセンスがない(と思う)ため毎回固辞している。その分毎回公演がある度観に行き、そのクオリティの高さに舌を巻いている。今回も非のうちようのないもので、終始感動が止まらなかった。皆お疲れ様。

 

 

公演が終わり、部屋に帰る。余韻に浸りながらインスタを開き、無為徒食を貪る。インスタには次第にダンス関連のストーリーズがあがる。それらを見ながらふと考えた。

 

 

 

 

自分には何があるのだろう。

 

 

部員は各々のダンスを褒め、留学等の別れを惜しみ、バトンを後輩へ繋いでいる。それらを行う皆の顔は間違いなく生き生きとしているし、素敵だし、嫉妬の感情さえ覚えた。去年から入っていればこの輪に入れたのだろうか。

 

一方自分はどうだろうか。数少ない優しい友達と生産性のない時間を過ごし、授業を6.7割の力でこなし、余った時間をゲームに費やす。そこにあるのは空虚であり、ハリボテの人生ではないだろうか。皆が共通の目標のために臥薪嘗胆し、かけがえのない仲間を得ている一方、自分の周りはただの私生活の延長線で仕方なしに付き合ってくれてるような優しい人達だけ。

 

正直、何の努力もせずこの学校に来て、自分は周囲を貶めていた。勉強面において英語力は大敗しているが、大した教養もなく、生産性に欠けた努力を徒労している人達だと思っていた。しかし、この学校に来て一番損をしている人間って実は自分だということに漸く気付かされた。ここに来て何を得られたのだろう。

 

 

こういった思いをこういうブログのような媒体でしか吐露できない。誰かに相談したくても相手は相手でまた別の悩みがあったり多忙を極めているに違いし、何より鬱陶しいと感じるだろう。というかそんな友達がいない、誰も自分なんかの相談には乗ってくれないだろう。

 

 

こんな事言いたくないしすごい気持ち悪いけど、このままだと心の整理がつかないし今も私生活で表情に出たり周囲に悪影響を与えてしまっているから取り敢えず書いてみた。気難しくて不器用な人間なんて誰だって嫌いに決まってる。

 

…風呂みたいな何もない空間に長くいるとどうしても無駄な事ばかり考えてしまう。とりあえず期末の準備でもして寝よう。ここまで見てくれた人がいるなら時間を無駄遣いさせちゃってごめんナサイ。

 

 

こんな季節だし本当にあった怖い話を一つ

これは私、武藤晃典が実際に体験した怪談話である。



風呂から上がりベッドの上でYouTubeを観ながらゲームをしていた。8月もまだ半ば、茹だるような暑さが体を襲い、たまらずクーラーのリモコンに手を伸ばした。時刻は0時を回り仕事で多忙な家族はもう眠りについた。暫くゲームをするうちに意識が朦朧とし、部屋の明かりを消そうとした。その時、腹部に痛みが走った。「この時間にかー…」と軽くため息をつきトイレに向かった。


用を足し、いざトイレから出ようとしたその時、その時だった。視界の端で何かが動いている。最初は自分の影かと思った。しかし、自分は一切動いていない。恐る恐るその動いている"モノ"に目を配らせた。それが何かと理解するまでに時間は要さなかった。そう、あの「光沢を放った黒い昆虫」だ。秋田は涼しくてそこまで目撃しないために完全に油断していた。8月の蒸し暑い気候、そして深夜、この時間はまさに奴等の"ゴールデンタイム"なのである。


思わず僕は硬直していた。何せ18年間都会で育ったこの身、虫は大の苦手である。しかもこの状況。ゴキブリへの恐怖心とトイレの現場を見られた屈辱感で頭は真っ白、感情がぐちゃぐちゃになった。額からは脂汗がじっとりと湧いた。


勿論この時間だし家族を起こすわけにもいかない、騒げば近所迷惑にもなる。近くにゴキジェットの類もない。孤軍奮闘、なんなら詰んでる。その時の自分は蛇に睨まれたカエルそのものであった。



それから何分経っただろうか。依然として膠着状態が続いていたが、それは急に破られた。"奴"が動き出したのである。しかも、こっちの方に。体は震え、本能的に死を覚悟した。頭を駆ける走馬灯。お父さんお母さん、今まで仲良くしてくれた友達皆ありがとう、そう心で遺言を述べ、体を楽にした。………てあれ?生きてる?恐る恐る下を覗くと"奴"もまたこっちを見ていた。


それはまるで何かを訴えかけているようだった。もしかしてゴキブリに姿を変えた友人だったりするのか?試しに何人か友達の名前で呼んでみたが反応はない。何なんだ、分からない、分からなすぎる。お前だって人間のトイレに居合わせるの気まずいだろ。なぜ留まる。気づけば感情は恐怖から懐疑に変わっていた。


"こいつ"の真意は何なんだ、そうずっと思索していると、出し抜けに"奴"は扉の下の隙間から出て行った。ひとまず命に別状が無いことに安堵しつつ考えた。何故あいつは俺のことを見つめていたのか?暗くて長いトンネルにいるように答えが見つからない。それでも必死に思考を走らせた。その結果一筋の光がちらついた。




"奴"、いやあの"ゴキブリ"は「現代社会へのアンチテーゼ」だったのではないか。


調べてみるとゴキブリは約2億年前から生息し、人間の祖先は約1億年前に誕生している。我々の方がずっと新しい種だ。それなのにどうだろう。今や人間が地球を牛耳り、自然を壊して家を建てる。その中のエアコンの効いた部屋で貪るようにゲームをして毎日を溶かしている。そんな我々がなぜゴキブリを忌避しているのか。私は先程トイレの中で現実逃避の如くスマホを見ていた。あのゴキブリはそんな電子の中に住まう我々を蔑視していたのではないのだろうか。自分は何と愚かだったのだろうか。


時刻はもう1時を回った。人間の営為の愚かさ、それを気づかせてくれたゴキブリの偉大さに圧倒され、トイレを流した。そして、ゴキジェットを求め闇の中に体を溶かした。それはそれ、虫は嫌い。

いい加減オールドファッションの食べ方を決めよう

僕は今、"あるもの"と対峙している。


きつね色に揚がった生地にチョコがかかった、誰もが知るオールドファッションだ。バイト終わりに食べるミスド程体に染みるものはない。


だが今、僕はこいつにキレている。




何故チョコの面積がここまで少ない?

食べる人が持ちやすくするため?ならポッキーくらいのチョコの比率でもいいはず。ミスド側による意図的なマーケティング戦略なのだろうか。


それだけではない。恐らく多くの人が長年頭を悩ませて来たと思うが食べ方に困るのである。カレーでさえ米とルーの比率が1:1である。途中で失敗してどちらかが余っても家であれば足して満足いく食事をすることができる。


でもこのバカはそうはいかない。ミスドに「このパサパサ生地が余ってしまったのですがチョコソースかけてくれますか?」と言ったらかけてくれるのか?消費者をなめるな。


試しに「オールドファッション 食べ方」で検索してみても、結果は「オーブン加熱で美味しく仕上がる!」だとか「冷凍しとくとサクサク感が増す!」といったものしかない。周りの人間はもうダメだ。ミスドの掌の上で転がされ、この状況をさも当たり前のように捉え、さらにそれに楽しさを見出している。おしまい。


再びオールドファッションと相対する。だんだん口を大きく開いてこちらを嘲笑する顔のように見えてきた。これは幻覚か、はたまたミスド側の勝ち誇った笑みそのものなのか。


たまらず生地を一口齧る。サクッとした口当たりは良いが咀嚼を繰り返すうちに口の中が乾燥してきた。カロリーメイトと同じだろこれ、そう毒づいてたまらずチョコ生地を頬張った。

これがカレーだったらどうする?まだ米が全体の7割強を占めているのに救いのルーは数口分しかない。孤立無援。背水の陣。恐らく漢に囲まれた項羽も似たような気持ちだったのだろう。もはや美味しさはとうに消え、"絶望"を味わいながら食べ進めた。


そうこうしている内にチョコが残り一口に。涙を流しながらチョコを完食すると残りは生地のみに。何なんだこの物体は。何故砂漠に落ちてるような石を食べなければいけないのか。ミスドを、そしてこの世の全ドーナツを呪いながら残りの石を口に運んだ。



原型をとどめてたまるか、そう思い粉々に擦り潰れるまで咀嚼を繰り返した。口内がパサパサする、苦しい。お茶を飲まねば…。そうお茶に手を伸ばした瞬間鼻から何かが抜けた。


最初はそれが何か分からなかった。しかしそれが芳醇な小麦とバターの香りと気づくのに多くの時間は要さなかった。仄かな甘味、まろやかな風味のバター、生産者の顔、ドーナツを裏で一生懸命作るお姉さんたちの姿…。これらが走馬灯の如く脳内をめぐり気づけば僕は膝から崩れ落ちていた。そして膝には大粒の涙がこぼれていた。



一般的に我々はチョコレートやその他ソースといった主役に目がいく。しかしそんなもの虚構でしかない。そうしてステージの上で輝くソースの裏には必死で支える生地の姿がある。確かに地味だしなんの取り柄もない醜怪なものかもしれない。でもそいつらは、陽の目を浴びることを捨て、優しい心でソースを照らしているし、噛めば噛むほど奥ゆかしい優しい味を持っているのだ。ミスドが真に届けたかったのはオールドファッションなんて稚拙なものではない。縁の下の力持ちが持つボールドパッション(寛容な精神)だったのである。自分はなんと矮小な人間だったことかと激しく呪い、残りのドーナツを嚥下した。



アラームが鳴った。コンポのinitial writing planの提出まで後1日を切った。僕は胃袋ではない、もっと大きく、でも見えない"何か"が満たされる感覚を持ったままパソコンへと向かった。





以上、オールドファッションとボールドパッションって韻踏めそうだなーって所から着想を得た駄文でした。この文章が良ければグッドボタン👍とチャンネル登録😎お願いします!ではおやすみなさい。